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おとなの森は甘くない〜森のキライなところ教えてください

もっと「五感」で感じよう

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もっと「五感」で感じよう

〜五感とひびきあう感性〜北海道発の木育の理念に掲げられている大切なテーマの一つだ。
子どもたちを対象に森林で活動する場面が多い私にとっても、どうやって「五感」で感じるか、感じてもらうかは大きなテーマだ。そういう私が「五感」をより深く考えさせられる一つのきっかけがあった。

 

それは、盲学校の子どもたちの森林体験活動を受け入れたときのこと。受け入れが決まった時から悩み、考えた。「視覚」を抜きにして、どうやって森のことを伝えられるだろうか。そして、それまでいかに自分が視覚に頼って物事を感じ、そして、人に伝えていたかということに気づかされたのだ。
わずか半日の活動だったが、私は盲学校の子どもたちからたくさんのことを教わった。
ひらけた場所から森に足を踏み入れるその瞬間、ある子は「あっ、暗くなった!」と言った。めらめらと燃えるたき火の炎。炎を初めて間近で体験したある子は、興奮気味に「熱い風だ!」と言った。炎と風を思い浮かべてみると、視覚的に浮かぶそれらの情景は全く別モノだ。でも、視覚を抜きにすれば、どちらも空気の流れを肌で感じているということであって、そういう意味では違いはない。

 


こちらが伝えるまでもなく、彼らは鋭敏な感覚で、そして私が感じたことのないとらえ方で、森や自然を受けとめたのだった。
ところで「五感」というけれど、実際のところそれぞれの感覚にもたくさんの感じ方がある。例えば、指先の触覚だけでも、ぬくもり、湿り気、かたさ、なめらかさ、・・・いろいろなことがわかる。体の部位が変わると、舌ざわり、歯ごたえ、踏みごこち・・・また別の感じ方がある。
自分の感性をもう一度とらえなおし、それぞれを研ぎ澄ませてみると、森の楽しみはグッと広く、グッと深くなるはず。普段見慣れた場所も全く別のものに感じられるかもしれない。

 

ある日は、目を閉じ、じっと動かず、耳をすませて音だけで森を楽しんでみたり、落葉のフカフカ感、枝を踏んだ時のぽきっという感じ、ある日は足の裏で森を楽しんでみたり、一番手ざわりが心地よいものを探す「森の手ざわりコンテスト」とか、鼻で楽しむ花の日とか・・・
感覚をとぎすませてみると、楽しみがまだまだ広がりそう。

※写真と本文の内容とは直接関係はありません

 

帯広の森・はぐくーむ 日月 伸(たちもり しん)