何度でも生まれ変わる木材
みなさん、こんにちは。北海道内で「歴史的建造物の保存再生」活動をしています。「えっ?建物の保存が、どうして木育なの?」って声が聞こえそう。でも見てください。
この写真は、昭和2年の建物に使われていた材料を1つ1つ手作業で外して、カビないよう折れないよう、大切に保管する作業途中の写真です。一番奥にある、ちょっと変わった斜めの窓が見えますか?
この窓は、応接室と階段をつなぐ窓で、この材料が新しい建物にはめ込まれたものが、次の写真です。
昭和2年に作られた木の古材がそのまま使われて、新しい建物に納まっています。木は、古くなっても手入れと保存状態が良ければ、何度でも生まれ変わる要素を持っている、大切な建築材料です。これがコンクリートの場合には、部品ごとに扱うことができないので、更新がとても大変です。皆さんの周りにも、立て直すことが容易でない老朽化したマンションがあると思います。
建築物にとって、木は最も扱いやすく且つ更新のしやすい材料で、ちゃんと手入れをすれば長く保てることは、奈良や京都の建物を見れば歴然です。でも一方で火災に弱く、雪国である北海道では寒さの対策が必要になります。しかし、このような古い材料を使った喫茶店や居酒屋さんが「落ち着く、和む」という理由から、大繁盛しています。中には、完全に新築で材料を古く見せているだけの偽者?もありますが、「古い木の材=古材(こざい)」が人々から愛されるものだということに変わりはありません。基本的に建物を丸ごと保存活用することが私の活動なので、出来るだけ建物ごとの保存の可能性を探り、どうしてもどうしてもダメな時は古材としての活用を探ることになります。この建物の時は、写真で見えている細い材が折れてしまい、色や木の種類が変わってしまうので、同じ建物の床材を細く切って再利用しました。かかわった棟梁が腕を振るった作品です。
建物丸ごとは残せなかったけれど、出来る限りの古材を運び、再利用することが出来たのが、この旧小熊邸です。
古い木の建物を見たら、材料になって活きている木のことを思って、大切にしてください。そして、その建物を壊すことは木の命も殺すことに成りかねないことを考えてくださるとありがたいです。
NPO法人旧小熊邸倶楽部 東田秀美
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