私も「椅子」作ってみました
「君の椅子プロジェクト」(旭川大学ゼミ)が生まれ、上川管内東川町がこれに共鳴し「東川町で生まれてくる子どもたちに地元の材で作られた椅子を贈る」というお話を木育懇談会で磯田講師から聞きました。その後木育リレーエッセイで会員の長谷川敦子さんからも紹介されましたが、そのような椅子を自分で製作したいと思いたちました。
材料はカラマツや白樺の丸太です。椅子の製作はその丸太をチェンソーで加工することから始めました。
腰掛け程度の椅子であれば高さ調節のみの切断で、椅子の役目は十分ですが、丸太は持ち上げたり移動するのにはとても重く、乾燥中にひび割れや腐食することもあります。
当初は設計もデザインもせず無造作にチェンソーで加工していましたが、完成直前で切りすぎたり失敗したりしましたので自分でデザインと設計図を書き、切断の順番も計画しました。
また、制作中に切りすぎたりして失敗した端材は捨てることなく木炭として再利用出来るので安心して楽しく大胆に製作できます。子ども用の椅子の製作にあたっては、最初にどのような椅子をイメージするかが問題でした。子供が食事をしたりその椅子で遊べるような安定性のある軽い椅子を考えました。丸太をチェンソーで彫刻し、木の持っている温かさを最大限に引き出したいと考えました。最初のデザインと加工は背もたれのない椅子でしたが、次は肘掛けと背もたれを一体にしたものを加工しました。
背もたれを少し大きくしたところ、人の形のようになりました。このように椅子のデザインも進化し不慣れなチェンソーの扱いにも慣れ加工技術も少しずつではありますが腕が上がってきました。最終的なデザインは母に抱かれている子どもをイメージしました。背もたれは「母の胸と顔」、肘掛けは「母の腕」、腰掛けの部分は「母の膝の上」です。
チェンソーとノミで粗仕上げした後に電動サンダーで樹皮と角張ったところを処理し最後は紙ヤスリを掛けました。手首と腕は一体となってやさしさを表し、膝の上は温かい膝を表すためにかなり大きくしました。左右の膝の間には割れ防止を目的とした先行目地を入れましたが、この目地を入れないと輪切り材は中心に向かってどこかに収縮の割れ目が入ります。割れ目を入れることによって膝の感じが出たようにも思います。
最後に塗装も考えましたが、無塗装の椅子に触れて、木のぬくもりを感じていただきたく無塗装としました。また、未乾燥材のため今後水分が抜け変形や割れも入るかも知れませんが、それも自然現象の一つとして見ていただけると、木と共に育めると思います。このようにデザインや加工に思いを込めて試行錯誤を重ね楽しみながら製作しました。現在まだ子供にさわってもらっていませんが、他の木のおもちゃ同様にこの椅子で遊んだり座って頂けると丸太も私も嬉しく思います。
木育ファミリー会員 堀尾時司
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